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先に沈黙を破ったのはハルさんだった。
「どういう・・・こと?」
「とぼけないでください。さっきの魔法といい、謎の石、それにかの有名なハネツキ博士ともつながりがある。一般人じゃない事くらい俺にだってわかりますよ。」
「何で博士とのつながりを知ってるの?話したことないよね?」
「伝言を預かったんです。カミハルムイへ来るようにと。」
そう言って預かったルーラストーンを渡した。
「・・・・・・・・・そっか。・・・よし、教えてあげるよ私の正体。ただし、」
「ただし?」
「カミハルムイについてからね♪」
ガクッ
何なんだこの緊張感のない会話は・・・
「いざ王都へ向けてしゅっぱ~つ。」
そう言いながら家の外へ出ようとしているハルさんを呼び止める。
「ちょっと待って下さい!カミハルムイまではどうやっていくんですか!?」
「え?そりゃ博士から預かったルーラストーンでに決まってるでしょ。ほかに何があるの?」
「では、ハルさんは一度でも王都カミハルムイへ行った事があるんですか?」
「ないわよ。だから楽しみなんじゃない。」
「俺もないですよ。」
「だから?」
「分からないんですか?ルーラストーンは、一度訪れた事のある場所しか飛べません。二人とも訪れた事がないのなら飛んで行くのは不可能ですよ。」
「あ、そっか!どうしよう~。仕方ない、こうなったら歩きでいいんじゃない?」
「だから、ここから一歩も外へ出れないんですってば!」
「嗚呼そうだった・・・も~」
あなたのせいですよ?
再び振り出しに戻った俺達は途方に暮れていた。途方に暮れていても腹は減るので朝食をとることにした。もちろん、ハルさんの手料理。昨日同様に庭で食べる事にした。
「昨日も思ったんだけどさ、庭に桜の木があるなんてすごいよね。手入れ大変でしょ?」
ハルさんの言うとうりうちの庭には桜の木が植えてある。一見立派だが、お値段何と980G。しかもカミハルムイ領にある桜と同じで万年桜なので枯れる事も全て散ってしまう事もない。花は常に満開のまさに花見時だ。見栄っ張りな俺にはぴったりの庭具だ。もちろん万年桜は手入れも世話も必要ない。男ってのは見栄を張る生き物なんだよ。って、誰に言い訳してんだおれは。
「あ~桜見てたらお酒が飲みたくなってきちゃった。なんかない?」
「ダメですよ。王都はどうするんですか?」
「そんなもの後で考えれば良いでしょ。どうせここから動けないんだから。」
だから、あなたのせいですってば。
「あるの?無いの?どっち?」
「・・・・・・・・・あ、焼酎くらいならありますけども・・・」
「焼酎!?のむのむ!早く出して!」
小声で言ったのにばっちり聞いてやがる。こう言う時だけ地獄耳なんだから・・・まあいいけど。
「熱燗でね~。」
「おっさんか!?」
ちなみに熱燗(あつかん)とは燗酒(過熱したお酒)の温度段階の事で主に50度前後の事を挿す言葉だ。熱燗=おっさんとは、勝手なイメージだが思わずそう突っ込んでしまった。
で、仕方なく加熱しハルさんの所へ持っていく。暦は現在秋下旬。寒さが深まってくるこのころには温かい飲み物が欲しくなる。しかし、焼酎の熱燗って・・・
「ふーふー。うーん美味しい~!」
先ほどの熱々のお酒を冷ますしぐさは可愛かったのだが、お猪口で飲んでいる姿は中年男性そのものだった・・・
いや、あまり考えないでおこう。
「げふっ。あ失礼。」
あ~愛ってこうして冷めていくんだな・・・悲しい事を悟ってしまった。
幸せそうな顔をして焼酎をガブガブ飲んでいるハルさんを見ているとコマーシャルみたいなセリフが頭の中で構築されてゆく。
{お酒は二十歳を過ぎてからにしましょう。よい子の皆は絶対真似しないように。え?ハルさんはいいのかって?
ハルさんは5歳って言ってるけど、本当は(ハルさんの都合により、規制されています。)歳だからいいのさ。}
どこのCMだ。自分にも突っ込みを入れる。

ハネツキ博士から預かったルーラストーンを貸してもらう。特に意味はないのだが少し気になる点があったので確認してみる。
気になる点というのは、このルーラストーンの色は心なしか緑がかっている気がしたのだ。普通のルーラストーンと比べてみるとやはり少し緑色だ。まあ、普通のルーラストーンと言っても住宅村専用のルーラストーンしか持っていないので普通はこうなのかもしれない。むしろ住宅村用の方が普通じゃないのかも。しかし、気になるので一度使ってみる事にした。
「ハルさん、ちょっと家の正面へ移動しましょう。」
「へ?なんれ?」
完全に酔いつぶれているハルさんの手を引き、家の前へ移動する。
「ちょっちょっちょ、まってよ、何れ私まれもが移動しらきゃいけにゃいのさ?」
「試しにハネツキ博士のルーラストーンを使ってみる事にしたんです。」
「ふーん。いけらいと思うけろね。」
酔いのせいか言葉があやふやな八ルさん。だからお酒はやめとけって言ったのに。
家の前で、ルーラストーンを掲げ、叫ぶ。
「ルーラストーン!」
ふわっと俺の苦手な浮遊感が来ると思ったので身構えたのだがこなかったし、石は光もしなかった。
「やっぱ無理か・・・」
と思ったその時、足元にとんでもない光景が広がっていた。そこにはさっきまでなかったはずの赤い大きな魔法陣があった。
「何これ!?」
驚いていると今度は周りの景色も変化し始めた。
「家が動いた!?」
正確には景色が円状に回転し始めたのだ。魔法陣の外側の世界だけ。そして一瞬で目の前に桜の木が現れた。庭の桜では無い。もっと大きく立派な歴史ある桜だ。こんな見事な桜が見れるのは世界広しといえども一か所しか知らない。
『王都カミハルムイ城 城内庭園』
「・・・!」
驚きのあまり言葉が出ない。しかも驚くべきことに、俺とハルさんが座り込んでいる先ほどの魔法陣を囲む様にしてハネツキ博士他数名の研究員が立っている。

「あれ?君は・・・誰?」
           to be continued・・・・・・