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ププノスさんの提案で、魔術師バルスタフ撃破の祝杯をドルワームの酒場であげることになった。俺達は何にもしていないので最初はなぜププノスさんが中心になっているのか疑問だったが、ウルロイさんをはじめ、白と黒の継承者の皆さんも来るということなので気にせず参加することにした。
酒場につくと、すでに白と黒の継承者のメンバーは来ていた。
ウルロイさんを囲むようにして何かを話している。
「ウルロイ、革命軍を止めるのは本当に大変だったんだからね。感謝しなさいよ。」
「すいませんでした。」
「あの、止めたのは俺とヘーベリさんですよね?ティシュアンさん特に何も・・・」
「私は倍加魔法使ったでしょ!それが無かったらどうにもならなかったじゃない。」
「はあ。」
「まったく、サブリーダーだからって偉そうにするなよ。」
「あんたこそ何にも役に立っていないんだから黙ってなさいよね!だからあの時、走ってウルロイを呼んで来いって言ったじゃない。」
「指揮をとることに関してはサブリーダーだからかまわないが無茶なことを言うなってことだ!」
今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうな雰囲気の中、ウルロイさんが間に入って仲介をしようとした。
「あ、あの、皆さん、争いはよくありませ・・・」
「「リーダーは黙ってろ!」」
「す、すいませんでした!!」
しかし、二人に同時にそういわれている。
見ていてこの人本当にこのチームのリーダーなのだろうかと思うくらい威厳がない。かわいそうなウルロイさん。
俺があの中に入ったら、争いは止まるかもと一瞬思ったが、よく考えるとウルロイさんより果てしなく弱いうえに部外者である以上、止める権利も、力もない。巻き込まれてもみくちゃにされてしまうだろう。第一、一人であの雰囲気の中に平然と入れるほど俺には度胸というものがない。今だって、どうしていいか分からず出口の前で突っ立っている。周りにいる他の客も心配そうに見ているが、白と黒の継承者のメンバーの皆さんは笑っていたり、茶化していたり、無視して平然としていたりと誰も心配などしていなさそうだ。ということは、日常的にこんな感じなのだろうか?
そこへ、タイミングよく博士たちが来た。
「今日は飲むぞー!」
今日も、でしょう?博士。
「お、アテン。早いじゃないか。白と黒のけーしょーしゃのやつらは?」
あんだけ騒いでいるのに気がつかないのか?
ププノスさんと違い、ウェタートさんは入店してすぐに騒ぎに気が付いていたのだが、何事もなかったようにしている。もしかして、おかしいのは俺なのか?いやいや、周りの客も困ってるし・・・
しかし、どうも客が困っているのはうるさいからのようだ。ウェイターの人が耳栓を配っており、耳栓をつけると誰も騒ぎを気にしなくなった。それでいいの!?
あ、あれ~俺はやっぱりおかしいのか?
自分を信じれなくなりかけていると、ププノスさんがやっと騒ぎに気がつき、ウルロイさんたちに近づく。
「おーい、楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ。」
「はぁ?誰だよおまえ。」
「脳筋馬鹿オーガのセトダイは知らないだろうけど、ウルロイと一緒に行動していたハネツキ博士の仲間のププノスさんよ。少しは勉強しなさいよこの情弱が!」
「誰が脳筋馬鹿オーガだ!ぶっ殺すぞ!?」
情弱に関しては否定しないのか。
「ふん、あんたなんかじゃ私には傷一つつけれないわよ。」
「よーし、やってやろうじゃないか。このくそババアが!」
「誰が婆よ!私はまだ24だっての!」
「年は関係ねえんだよババア!要するに見た目だよ見た目!老けてんだよバーカ!」
「キー!死んで後悔しろ!絶対に許さん!」
「ふ、二人とも落ち着いてくださ・・・」
という、ウルロイさんの声は届かず、二人は激しい戦いを繰り広げ・・・なかった。
戦いは戦いなのだが、バキッ!ドンッ!などの激しい効果音より、ポカ、ポコ、が似合う軽い殴り合いをしていた。もはや殴っていると言っていいのかさえ不明である。それでも、当の本人たちは真剣に戦っているので思わず笑ってしまいたくなる。現に、チームメンバーのほとんどが笑っており、ププノスさんと博士も声をあげて笑っている。ウェタートさんは、何が起こっているのかと考え込んでいる。
よく見ると、ある人がスティックをもって、微笑んでいる。名前はわからないが、人間の女性だ。
この現象は、どうやらあの人が原因のように思える。証拠がある訳ではなかったが、なんとなくそう思った。
「あの~・・・。」
思い切って話しかけてみる。
「はい、何でしょうか?」
女性は、微笑みながらこたえた。
「あの二人が変なことになっているのは、あなたが何かしているからでしょう?」
そうきくと、女性は不思議そうにこう言った。
「・・・よくわかったね。私が魔法をかけていることに。」
やっぱりか。
「私の名前はヘーベリ。あの二人には物理攻撃弱体魔法をかけているの。本人たちには分らないけど、周りから見ると威力がないのがよくわかるでしょう?」
「ええ、殴る動作は威力がありそうなのに、攻撃自体には全く威力が感じれません。」
「うふふ、そうでしょう?あの二人、よく殴り合いの喧嘩をするから私がこっそり弱体化させて、安全に喧嘩させてあげてるの。二人とも強いから、まともにぶつかったら周りも危ないわ。」
「安全にって・・・喧嘩を止めるという発想はないんですか?」
「それはもちろんあるわ。でもね・・・」
ヘーベリさんはにっこり笑ってこういった。
「ケンカするほど仲がいいのよ。無理に止めることはないわ。」
ああ、なるほど・・・。そういうことか。
誰も二人を止めない理由が分かった。
「ふう、疲れた。相変わらずなかなかやるじゃない・・・セトダイ。」
「お前もな・・・。」
疲れて結局勝負はドロー。お互いの強さを認め合い、バトルマンガ風なセリフをいっている二人だったが、あんな勝負を見ていた俺達からすると、シュールな光景に思えて仕方がなかった。
「本人たちは、本気で戦っているように錯覚するから仕方ないのよ。そうでないと、私が魔法をかけていることに気がつかれちゃうでしょう?」
と、ヘーベリさんが心を見透かしたように教えてくれた。この人も、少し不思議だ。つかみどころがないというか、何というか・・・。
「さて、喧嘩も無事終わったことですし、皆さん楽しんでくださいね。」
ウルロイさんは、喧嘩が終わってホッとしていた。なんでも、白と黒の継承者の中であの喧嘩が力を抑え込まれていることを知らないのは本人たちとウルロイさんだけだそうだ。なので、ウルロイさんは毎回本気でおびえているらしい。そんなおびえて泣きそうなウルロイさんをにこにこしながら眺めていたヘーベリさん。もしかして、それが楽しいから秘密にしているのか?このチームでのウルロイさんはどうやらいじられキャラのようだ。それにしても、あんなに迫力のない喧嘩を見れば気づいてもいい気がするんだが。まあいいか。
こうして、宴会が始まり、ほとんどの人が革命を止めるために何もしていない事実は完全に忘れて皆盛り上がっていた。そんな中、ウルロイさんがこういった。
「そういえば、せっかくチームメンバーがほぼ全員集まっているので、アテンさんたちに紹介しましょう。すでに知っている方もいるかもしれませんが、改めてもう一度全員紹介します。まずは、ヴァススカさん!」
そういって、ウルロイさんはヴァススカを指差した。いつになくのりのりなウルロイさんを完全に無視する形でヴァススカさんは食事を続けた。
チームメンバーは大笑いだったが、ウルロイさんは泣きたそうだった。立場ないもんね。
しかし、ヴァススカさんは突然立ち上がり、こう言い放った。
「私はヴァススカ・マクアース。白と黒の継承者所属の見ての通りウェディの女。剣術が得意。」
一瞬にしてその場が静まりかえった。
この人、こんなに声出せるんだ・・・。というか、ちゃんと聞いていたのか。
「久しぶりにヴァススカのしゃべってるとこみた・・・。」
「だよな・・・。」
「酒に酔ってテンションが高いからか・・・驚いた。」
などと、チームメンバーからも驚かれている。とくに大声というわけではないが、普通の人並の声量があった。ふだんが小さからとても大きく聞こえた。
「・・・さ、さすがヴァススカさん。正直泣きそうでしたよ、僕。で、ではヴァススカさんに続いて、えー・・・・じゃあ、ハリルトンさん。」
「はい、ハリルトンです!白と黒の継承者所属。(自称)かなりかわいいオーガの女の子です☆」
ハリルトンさんは、張り切ってウインクまでした。しかし、
「ぷっ」
「あ~!今ウルロイさん笑いましたね!?馬鹿にしてるんですか!?」
「え、・・・いや、・・・その・・・違います。」
「じゃあなんでおどおどしてるんですか?」
「・・・すいません。」
あっさり認めた。
「ふーんだ。」
「ええと、次はネイプスさん。」
「俺もですか?」
「お願いします。」
「・・・はい、ネイプスです。白と黒の継承者所属。基本的に面倒なんで戦いません。回復役です。生きるのが面倒なダメ人間です。」
自分でそれを言うとはすごい人だな。
「もうすこし、やる気を出しましょうよ・・・まあ、いいです。次はウアルさん。」
「ウアルです。白と黒の継承者所属。魔法使いです。主に相手の足を止めるトラップ魔法が得意です。」
「次はヘーベリさん。」
「は~い、ヘーベリです。白と黒の継承者所属です。私もウアル君と同じ魔法使いです。普通の攻撃魔法を一通り使えます。得意魔法は・・・秘密です。ふふ。」
そう言ってほほ笑んでいる。まあ、ある人々には隠さないとな。
「秘密なんですか!?・・・仕方ないですよね。では、セトダイさん。」
「おう、セトダイだ。白と黒の継承者所属。体を鍛えることが趣味だ。あと、とにかくモーモンが好きだ。愛している!」
そう言えば、このチーム自体モーモン好きが集まって出来たみたいなチームだったな。
「モーモン愛なら僕だって負けませんよ。・・・では、最後にティシュアンさん。よろしくお願いします。」
「はい。ええ、白と黒の継承者サブリーダーのティシュアンです。リーダー不在の時などは私が指揮をとります。」
「す、すいません。ふがいないリーダーで・・・。」
別に誰もウルロイさんの事を責めたわけではないのに、勝手にあやまっている。
「へえ、8人チームですか。」
と言うと、ティシュアンさんがこう言った。
「いえ、正確には10人です。」
「10人?」
「あと二人、ここにはいませんが所属しています。」
そこで、思い出した。確かにもう一人名前を聞いた。確かホルクスさんだったかな?地下室を自分で作ったすごい人だ。あと一人いるのか。
その後、俺達が自己紹介をし、宴会は続いた。途中から酒場の客足が途絶え、貸し切り状態になった。たぶん俺達が騒ぎまくってるからだろう。俺は騒いでないがな。
これで客が来なくなってここがつぶれたら間違いなく俺達のせいだよな。
罪悪感はあったが、個性的な人たちばかがあつまっているので盛り上がりまくっており、俺にはこの騒ぎを止めることができる気がしないし、止める気もなかった。楽しいのだから。
盛り上がりも最高潮に達しているであろう騒ぎの中に、誰かが酒場に来た。
もしかして、騒ぎに気付かずに来ちゃったのか?悪いな。
などと考えていると、その客は見覚えのある姿をしていた。
「ドゥ、ドゥラ委員長!?」
なんとそこにはドゥラ委員長がいた。思わず叫んでしまった。すぐにみんながいっせいに委員長の方を向く。
「盛り上がっているところに水を差すようで悪いのですが、少し話をさせていただけませんか?」
「いいですよ、もちろん。」
ウルロイさんが言う。
「すみません。」
ドゥラ委員長が続けて話す。
「まずは、一個人としてお礼をいわせていただきたい。本当にありがとうございました。」
「いえいえ、お礼なんて・・・」
「皆さんがいなければドルワームに明日はなかったでしょう。あなた達はドルワームを・・・いえ、ドワチャッカを救った英雄です。この地に暮らす全ての民を魔の手から救っていただきました。それと、ハネツキ博士をはじめ、世界魔障管理委員会の全ての委員に黙って勝手な行動をし、多大な迷惑をおかけしました事を深くお詫びいたします。」
そう言ってドゥラ委員長は頭を下げた。
「委員ちょー、かしこまってどうしたんれすか?ははは。」
当のハネツキ博士は酔って話をまともにできる状態ではなかったが・・・。
「そんなことより、魔術師なんとかって、結局何だったんだよ。」
ププノスさんが聞く。
「ハネツキ博士たちは、私の日記を読んですでにご存じかも知れませんが、私はアグラニの町に現地調査を行うために訪れていました。そこで、断罪の竜について知り、興味本位で戒めの地に向かいました。地下に向かい、秘密の祭壇に向かうと、そこには誰かが捕まっていました。すでにこの処刑方法は禁忌として封印されていました。なので罪人などいないはずだと思い、竜に気付かれないようにそーっと近づいて確かめると、そこにはまぎれもない、ウラード国王様がいらっしゃったのです。そのときはどういうことかさっぱり分からずただ混乱していましたが、とにかく国王様を安全な場所に避難させようとしました。しかし、そんなときに牢のカギを壊す音で断罪の竜に気付かれてしまい、断罪の竜は襲いかかってきました。そのとき、黒いマントに身を包んだ謎の男が目の前に現れ、数撃で断罪の竜を仕留めてしまいました。」
「たった数撃で、あのでかいドラゴンを?」
「ええ、私も目を疑ったのですが、今は国王様の身の安全が優先だったので、その男について地上に戻りました。」
謎の黒マントか・・・いったい何者だろうか?
「そして、その黒マントの男がいう安全な場所までウラード国王様をお連れしたのですが、そこでその男から今の国王は魔術師バルスタフという魔物が化けているものだと聞かされました。そして、やつらは噂で国民の怒りをあおり、革命という名目で国と民との戦争を企てている。このままいくと、やつにドルワームを乗っ取られるといわれました。しかし、私が止めようとしたときには既に革命の火がついてしまっており、一人では止めることはできない状況でした。それで、思いついたのです。相手の計画を逆手にとって倒してしまおうと。」
「それで、革命軍のリーダーになったんですか?」
「はい。」
「なんでわざわざリーダーになったりしたんです?」
「そうすることで、あくまで私が反ウラード派についたと思わせ、正体を知っていることを相手に悟られないようにすることができたからです。それに、革命軍の長になれば、国王との会談ができ、相手のことや、水晶宮の内部の様子を調べることができたからです。」
「たしかに、ただの一般人がそんなことをすれば、何かを嗅ぎまわっていると気付かれ、相手が正体を把握されていることに気付きかねないですね。」
「革命軍のリーダーという立場を利用すれば、それが簡単にできるわけか・・・なるほどな。」
ププノスさんが納得したようにいう。
改めてドゥラ委員長は頭がいいと思い知らされた。そこまで考えて行動していたとは・・・
「こうして少しずつ情報を集め、決戦に向けて準備をしていました。その時、ラミザ王子の事を思い出しました。幸い、バルスタフは王子には手を出していませんでしたが、もしかすると追い詰められたときに王子を人質にしかねないと思い、事情を話し水晶宮から離れてもらいました。王子も最初は戸惑っていましたが、本物のウラード国王様のもとへ行き、国王様の口から真実を語っていただき、ようやく信じてもらえました。・・・私は信用をうしなった愚か者ですので・・・」
その話はうっすらと聞いた事がある。確か、魔障の研究で天魔が復活してどうのこうのとかで・・・あれ?王家の血筋についてだったかな?捨て子がどうのこうの・・・だめだ断片的にしか知らない。
「でも、ドゥラ委員長。どうやってひとりで魔術師バルスタフをひとりで倒すつもりだったんですか?」
ウェタートさんが聞く。
たしかにドゥラ院長は、はっきり言って戦えそうにない(もちろん推測でしかない)。それに、もし戦えたとしても
、一人で太刀打ちするのは難しいだろう(ウルロイさんほどの強さがあれば別だが・・・)。
「・・・・・・戦って勝つつもりはありませんでした。」
ん!?どゆこと?
「バルスタフを終焉魔法のひとつであるアルディラを使って異空間にとばし、封印しようと考えていたのです。」
「終焉魔法?アルディラ?」
「アルディラっていったら禁忌魔法じゃねーか!まさか、自分を道連れにしてドルワームを救うつもりだったのか!?」
「・・・そうです。」
「英雄気取るのもいい加減にしろよ委員長!!」
ププノスさんがものすごい剣幕で怒鳴った。あたりが静寂に包まれる。
「・・・何度も言うがな・・・何であんたは何でもかんでもひとりで背負いこもうとするんだよ!?その優しさを、なんで自分に向けることができないんだよ!?」
「・・・・・・。」
ドゥラ委員長は黙ってうつむいたままだ。
自分を犠牲にしてまでも人を助けようとするなんて普通の人にはできないことだ。その点ではドゥラ委員長はすごい人なのだが、ププノスさんや博士が言っていたように、この人は自分の事をまったく気にしていないのだ。この人は自分がどうなろうと他人が助かればいい。そんな考え方だ。これは必ずしも正しいとは言えない。ほとんどの人が賛成しないだろう。いくら他人に事を思っても、自分を大切にしなくては何も始まらない。
それにしても、さっきから気になるワードが出てるけど説明はなし・・・。みんな知っている前提なのか?
今知った情報をもとに自分なりに解釈すると、終焉魔法アルディラは禁忌魔法で、対象を異世界に飛ばして封印することができる?魔法で・・・自分が道連れってどういう意味だろう?
まあ、どうであれドゥラ委員長は自分の身を犠牲にしようとしていたわけか・・・。それしか分からなかった。
気まずい空気の中、ウルロイさんが何かを思い出したように突然こういった。
「取り込み中失礼しますが、バルスタフについてドゥラ委員長にお聞きしたいことがあります。」
「・・・何でしょうか?」
「魔術師バルスタフがいくら強いといっても、ひとりで国を乗っ取ろうなんて愚かなことは考えないでしょう。」
一撃で倒しておいて強いって・・・
ウルロイさんは続ける。
「つまり、バルスタフには仲間がいた・・・そう考えるのが妥当だと思います。ドゥラ委員長、何か奴が仲間がいる事をほのめかすような言動を聞きませんでしたか?」
少し考えてドゥラ委員長がこういった。
「あいつが戦う前に一人になったときに「作戦がうまくいかないとあの方に・・・」と、言ってました。おそらく仲間がいます。」
「やはりそうですか!」
予想が当たったと嬉しそうにウルロイさんは言った。
「僕の予想だと、あの会社AHWが怪しいです。今のドルワームは革命などで財政上厳しい状況にあるはずなのですが、最新鋭の機械警備兵type-Hを導入していました。しかもすごい数。たかが一般市民相手にここまで本気の体制で挑むのは少し不思議に思えるほどです。いったいtype-Hを導入する費用はどこから出たのでしょうか?」
「確かに不思議なんですが、その前にtype-Hって何なんですか?」
根本的なところがわからない。
「ああ、すいません。アテンさんはわかりませんよね。」
なんかその言い方傷つく・・・当たってるけども。
「type-Hとは、アストルティア・ヘブンズワールド社が開発した機械警備兵のことです。メタルハンターをベースとして、同社が開発した警備兵用高性能戦闘システムOSである『Uriel』を搭載しています。それと、通常のメタルハンターは左腕に弓を装備していますが、type-Hの場合、マシンガンを装備しています。」
たしかに、ガタラで見たやつはマシンガンを使っていた。
「そして、破壊されやすい機械警備兵には考えられない程の高性能なコンピュータを含め、さまざまなセンサーが取り付けられていて、さまざまな状況に瞬時に適切な判断が取れるすぐれものです。Urielを使用したシステムはかなり万能で、戦闘ごとにデータを集計、分析し、次第に強くなるAIも備わっているまさに今の最新機械警備兵です。」
うん、さっぱりです。とにかく凄いんですね。
「あ、アテンさんよく分かっていない人の顔をしていますよ。わかりにくかったですか?」
「いえ、よく分かりました。」
これ以上説明されても分かる気がしない・・・。
「それで、type-Hって、どのくらいするんですか?」
すごいらしいから数百万はするんだろうな・・・。
「一台約一億五千万G(ゴールド)ですね。」
「一億五千万!?」
想像もつかない大金だな、おい。
「国家レベルでは普通の金額なんですが、今のドルワームの財政はお世辞にもいいとは言えないくらいですから厳しいはずなんです。」
お世辞にもいいとは言えないって、どれだけひどいんだろう?
「たしかに、今のドルワームは革命騒ぎで他国との貿易もストップし、国内の治安も悪く経済的に厳しい状況にあります。」
ドゥラ委員長が付け加えるようにそういった。
「つまり、魔術師バルスタフと、あの会社AHWがグルだったってことですか?」
「そうだと思っています。」
だとしたら、何が目的なんだろう?バルスタフの目的も結局わからないままだし、あの会社も、謎が多い・・・。
「うーん、一応確かめてみましょうか。」
「え?確かめるって?」
「僕の知り合いに情報屋をやっている人がいるんですよ。その人なら何か知ってるかなと思ったので。」
だったら、最初からそうすればいいのに・・・
「とりあえず、難しい話はこのくらいにして、アテンさんもドゥラ委員長も楽しみましょうよ。」
気がつくと、不機嫌だったププノスさんも楽しそうにしていた。
たしかにウルロイさんの言う通り、今ここで考えても仕方ないのかもしれない・・・そう思えてきた。
「こんな時だからこそ、楽しむのも必要なんですよ?」
こうしてドゥラ委員長も加わり、宴は夜中まで続いた・・・。
        to be continued・・・・・・