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この話は、本編が現在12月下旬あたりなので、時間軸的には過去の話になります。
そして、今回のはほぼネタとしての公開です。なんで今頃になってハロウィン?いつまでやってんの?とか思われても仕方ありませんが、これには海よりも深い理由がありまして、この話は今年のハロウィンイベントのネタバレ要素が多く含まれていて、本来なら10月31日当日にアップしたかったのですが、まだイベントをやっている31日の公開は自粛して、翌日の11月1日に公開しようと思いました。しかし、忘れていたいろいろな理由があって次回の本編公開日である11月10日に一緒に公開してしまえ!ということになったわけです。まあ、気にしないでください。
それでは、特別編『甘党もあきらめない』スタート!

トラロマーン諸島エルレア島。
大木をくりぬいて作られた家で、アルフィーナは血まみれの斧を肩に担ぎ、ウルロイに迫っていた。
「ちょ、アルフィーナさん。危ない、斧を下ろしてください。」
怯えながらウルロイが言う。
「よく来たウルロイ。待っていたぞ。はっはっは!」
邪悪な笑顔を浮かべてアルフィーナは止まらない。
ウルロイはアルフィーナに聞きたい情報があったのでここへ来たのだが、来て早々この状態だった。
「よく来たって・・・その行動は歓迎しているようには見えませんよ!?」
「うるさい。大歓迎してるさ!」
そういってアルフィーナは斧をブンブンと振り回した。
「あたる、あたる!あたりと死ぬ!なんなんですか!?僕になんの恨みが!?」
「ウルロイ!今日の日付は?」
「き、今日?今日は10月31日です!」
それを聞いてアルフィーナはうんうんと頷き、
「では、今日はなんの日だ?」
「へ、なんの日?なんの日だろう?」
ウルロイが本気で悩んでいると、しびれを切らしたアルフィーナがこういった。
「分からないのか、愚か者め!」
なぜいきなり斧で襲われたり、なんの日か分からないだけで愚か者呼ばわりされないといけないのか。ウルロイには分からなかった。
ため息をついてアルフィーナが説明する。
「ハロウィンだよ、ハロウィン!いくら愚かなウルロイでもそのくらいならば知っていると思ったが・・・はぁ、情けない。」
「まさかとは思いますけど、ハロウィンだからその血まみれの斧で襲ってきた・・・訳じゃないですよね?」
「ハロウィンなんだから当たり前じゃないか。」
よく見ると、アルフィーナは魔女を模した仮装をしていた。つまり、斧も仮装の一部のつもりなのだろう。だが、仮装に本物の斧を使う理由もウルロイには分からなかった。
「さて、そろそろあの魔法の言葉を唱えるとするか。」
「魔法の言葉?」
うぉっほん、とわざとらしく咳払いをしたアルフィーナは息を吸い込んで、こういった。
「トリック・オア・トリートメント!」
「惜しいカボ!」
ジャックはそう言った。
「・・・・・・。」
数秒間時がとまり、少し考えたあと、アルフィーナが目を丸くしてこういった。
「うわ!なにこのカボチャ!?」
それに対し、ジャックは
「おいらは、ジャック。お菓子の妖精カボ。」
といった。いきなりあらわれて普通に自己紹介するところがすごい。
「・・・あれ、ここはどこカボ?おいら確かスウィ~ツランドでマー坊と一緒にあそんでいたはずカボ・・・。」
あたりをキョロキョロと見渡して、ウルロイと目があった。
「あ、ウルロイ!久しぶりカボ~!」
「お、お久しぶりです。ジャックさん。どうして急にここへ?」
ウルロイは普通に返す。
「え、なに?お前このカボチャと知り合いなのか?カボチャの知り合いがいるなんて、本当に何者だよ。」
「いや、ジャックさんはカボチャじゃなくて・・・。」
「そんなことはどうでもいい。なんでいきなり私の家にカボチャが現れた?いくら私でも、この状況は理解できない。」
「おいらだって、理解できないカボ。」
「まあ、今日はハロウィンだからジャックさんがいた方が雰囲気出るし、いいんじゃいですかね?」
ふーん、と言いながらアルフィーナはジャックをまじまじとみている。
「ところで、カボチャ。」
「おいらの名前はジャ・・・」
その言葉を遮って・・・というより無視してアルフィーナは続ける。
「あんた、さっき自分のことをお菓子の妖精っていってたよね?」
「そうカボ。おいらはお菓・・・」
アルフィーナはニヤッとしてこういった。
「トリック・オア・トリートメント!お菓子をくれなきゃいたずらするぞ☆」
「だから、惜しいカボ。トリック・オア・トリ・・・」
その刹那、アルフィーナは大きく振りかぶって持っていた斧をジャックに向けて投げつけた。
ザクッという心地よい音で、斧は壁に突き刺さった。それは、ジャックの顔の横数センチの位置だった。
「あ、あ・・・ああ・・・」
ブルブルと震えて怯えるジャックに、アルフィーナは笑顔でこういう。
「お菓子をくれなきゃ、××しちゃうぞ♪」
「わかったカボ!ちょっと待つカボ!」
「じゃあ、お菓子ちょうだい。」
無邪気な笑顔で手をさしのべる。
ジャックは急いでポケットなどを探した。
「ない・・・お菓子が一つもないカボ。」
すると、アルフィーナは壁に刺さった斧を引き抜いた。
「アルフィーナさん、ダメですよ!洒落にならないから!」
「お菓子あげるから落ち着くカボ!今はないけど、スウィ~ツランドになら、山ほどあるカボ!」
「え、ほんと?」
斧を握った手を振りおろす寸前でとめた。
「ウルロイ、この女の子は何者なんだカボ?とっても怖いカボ。」
「昔からこういう人なんです。」
「カプサイ神を簡単には倒してしまうし、こんな怖い人が知り合いなんて、ウルロイは何者なんだカボ?」
「さあ、何者なんでしょうね?」
ジャックに(誰にでも)恐れられている暴君アルフィーナと、その暴君(誰でも)が理解できない存在ジャック。その謎の二人に何物かと聞かれる自分は本当に何物なんだろうかと、本当に悩んだ方がいいかもとウルロイは思った。


「さあ、着いたカボ。ここがおいらの住んでいるスウィ~ツランドカボよ。」
どのようにして、アルフィーナの家からいきなりスウィ~ツランドに来れたかというと、ジャックの使った『カツアイ』という都合のいい移動魔法のお陰だ。ハロウィンということで、あまり深く追求しないでおこう。
「本当はハロウィンの衣装を着ないといけな・・・まあ、きいてないカボよね。」
「うわ~、甘いにおいが漂って・・・いない!?」
お菓子の国に来たので、すぐに甘いにおいに包まれると思っていたが、全く甘いにおいはせず、アルフィーナはガッカリしていた。
去年も来たことのあるウルロイにとっては懐かしい感じだった。
「あ、マー坊。ただいまカボ!突然いなくなって悪かったカボ。」
しかし、ジャックにマー坊と呼ばれているナスのようなものは、返事をしない。どうやら元気がないようだ。
「あれ、マー坊の様子がおかしいカボ。」
「なにそのナス。麻婆茄子?」
「麻婆じゃなくてマー坊カボ。それにしても、マー坊が元気がないカボ。どうしたカボ?」
「声が聞こえ・・・・・・。辛い・・・・・・あふれ・・・・・・・・・・・・。」
そのとき、マー坊がもがき苦しみはじめた。
「ぶるぅっぎゃっ~~~!!」
するとマー坊が宙たかく浮いた。
「マー坊!!いったいどうなってるんだカボ!?」
ぼっ、と炎に包まれたかと思うとマー坊の姿がみるみるうちにカプサイ神に変わった。
「お、お前は!カプサイ神!いっ、・・・・・・いったいどういうことカボ?お前は去年やっつけたはずカボよ!」
すると、カプサイ神は笑いながらこういった。
「ふははは。我の魂は不滅なり。我の魂は小さきナスに姿を変え復活の時を待っていたのだ!それと、」
カプサイ神は続ける。
「より強くより辛くなって再臨した我はタダのカプサイ神にあらず。カプサイ神・激辛と呼ぶがよ・・・」
しかし、その台詞をアルフィーナが遮った。
「あのさ、お菓子はまだ?カボチャ。」
今そんな状況じゃないでしょ!?と、ジャックとウルロイは思った。
「お菓子~!お菓子のためにここへ来たのになんで進化したナスのようなものの三文芝居を見なくちゃならないのよ。」
空気もここまで読めないと、もはや問題も感じられなくなる。
「くっ・・・小娘がぁ!!」
自分の台詞を遮られていたことに腹をたてたカプサイ神・激辛はアルフィーナにむけて赤い霧を放った。
「我がレッドホットミストをくらうがいい!」
カプサイ神は哄笑した。
辺りを赤く辛い霧が包む。
ジャックも含めて、スウィ~ツランドの住民は皆苦しんでいる。
しかし、ウルロイとアルフィーナは平然としていた。
「ほう、レッドホットミストが効かぬというか。」
カプサイ神は驚いていたが、不思議と嬉しそうだった。
「え、ちょ、ジャックさん。大丈夫ですか!?」
苦しむジャックにウルロイが声をかける。
「逆に聞くけど、ウルロイ達はなんで平気そうなんだカボ?ゴホッ、ゴホッ!」
「まあ、辛くないと言えば嘘にな・・・らないですね。皆さんが苦しんでいるのがよくわからないです。」
「まったくだ。この程度の攻撃、攻撃のうちに入らない。貧弱どもめ。」
アルフィーナが毒をはく。
「そ、それよりカプサイ神!ゴホッ、ま、マー坊はどうなっかカボ!」
「そんな者は知らんな。貴様らはこの国の心配でもしておけ。」
「くぅ、マー坊をよくも・・・・・・。」
「もはや我を止めることはできぬ。この辛さに身をゆだねるがよい。ふははははははははっ!!」
すると、アルフィーナは冷たい顔でこういった。
「笑いがうざい。」
「それは、同意見カボ・・・違う!そうじゃないカボ!ゴホッ、思わずのせられてしまったカボけど、今はそんなことを言う場面じゃないカボ!」
思わずジャックがツッコミ役に回っていた。
「面白い。今年は我を楽しませてくれる強者が来ているようだ。特にそこの小娘、貴様は・・・・・・まあいい。貴様が何者であろうと関係がないことだ!さあ、我を楽しませるがいい!ふははははっ!」
カプサイ神・激辛は、笑いながらガラシの塔へ消えた。それに合わせて赤い霧も弱まった。
「さて、カボチャ。邪魔物は消えたしお菓子は?」
「ここまで避けられない戦い的な雰囲気になっても、まだお菓子優先なんだカボか・・・」
ジャックは諦めたような表情でそういった。
「私がここへ来た理由は、お菓子をもらうため。それ以外は興味ない。」
すりと、ジャックがなにかを思いついたようだ。
「じゃあ、お菓子あげるカボ。ついてくるカボよ。」
「よし、それでいい。」
アルフィーナとウルロイはジャックについていった。


「これカボ。」
ジャックの指差す方を見ると、そこには甘そうなお菓子が・・・なかった。
「な、なによこれは・・・」
代わりに、赤い唐辛子の粉がまぶしてあるお菓子がおいてあった。
「さっきの赤い霧にやられたカボ。この国のお菓子はみーんなこうなったカボ。それでも欲しいカボか?」
ジャックはアルフィーナに聞く。
「じゃあ、新しく作ってよ。」
「それは無理カボ。今は赤い霧のせいで何を作っても唐辛子がかかってしまうんだカボ。」
「うぐぐ・・・」
アルフィーナは、赤く染まった元甘いお菓子を見ながら握った拳を震わせていた。
「甘いお菓子はあきらめないぞ!あの唐辛子野郎・・・ぶっとばしてやる!」
お菓子が食べられないことに怒って、敵を倒すと宣言するなんて単純カボ。やっぱり子供は子供かぼね。誘導成功カボ。
と、ジャックは心のなかでそっと思った。
そんなジャックに、ウルロイは耳元でそっとこういった。
「彼女、実は僕より年上なんですよ。」
「えっ!?ど、どうしておいらの思ったことがわかったカボ?」
「・・・なんとなくですよ。」
ウルロイはいつも通りの微笑みで言った。
「それにしても、あの子がウルロイより年上って・・・そんなのありカボか?」
「ジャックさんには、僕は何歳くらいに見えます?」
「う~ん、見た目は20歳以上カボ。でも、絶対実年齢より若くみられるはずカボ。まあ、さすがに最高でも30歳くらいカボかね?」
「なるほど、だいたいあってますよ。さすがはジャックさんです。」
「ということは、あの子はもう30歳くらいカボか!?10歳以下って言われても信じられるカボよ。」
「それだけ若く見えるんですよ。まあ、僕も実際の年齢を知っているわけじゃないので、もしかすると・・・」
「もっと上ってことカボか?本当に不思議な子カボ・・・。」


ガラシの塔、最上階。下の階層の敵は、ウルロイが瞬殺してしまったため、1、2階はほぼ素通り状態だった。
だだっ広い何もない部屋の中央にカプサイ神・激辛は堂々と立っていた。
ウルロイ達を見て、お約束のように台詞を言い始めた。
「やはり、すぐにここまで来るか。だが、我は下層の者たちとは比べ物になら・・・」
スッ、と鋭い斬撃がカプサイ神・激辛を襲う。
「まだ台詞を言い終わってないのに・・・もう少し待ってあげてもいいんじゃないカボか?」
ジャックは台詞すら満足に言えなかったカプサイ神・激辛に同情していた。
こうして、カプサイ神・激辛はあっけなく倒されたかのように思われた。
しかし、倒れたのはウルロイの方だった。
「・・・っ!」
倒れこんだウルロイは苦しそうな表情をしながら、カプサイ神・激辛をにらみつけた。
「そんな!ウルロイ、どうしたんだカボ!?あのウルロイが倒れるなんて・・・」
「ふははははっ、我の辛さを前にして立っていられる者はいない!!」
ジャックがウルロイに駆け寄る。
「ウルロイ、しっかりするカボ!!いったいどうしたカボか!?」
「や、やられましたよ・・・。少し油断しすぎていたようです。体が、う、動かない。」
見ると、ウルロイの腕や脚は痙攣を起こし、細かく震えていた。
「まさか、麻痺カボか。今はまんげつそうを持ってないカボ!ど、どうすればいいカボか!?」
「落ち着いてください、ジャックさん。とりあえず、いったん退きます。僕の推測が正しければ、奴は・・・。」
「リレミト!」
アルフィーナがリレミトを唱え、ゲートがでた。
「情けないな、ウルロイ。こんな奴に負けていては、お前の目的は達成できそうにないな。行くぞ!」
3人は塔の外に出た。


「ふぅ、なんとか麻痺も治りました。助かりましたよ、アルフィーナさん。ありがとうございます。」
「ふん、あんな雑魚に負けるな。・・・しかし、いくらお前でもあの程度の奴に負けるとは思えない。油断していただけなのか?」
「・・・・・・最初、カプサイ神・激辛に攻撃したときに違和感があったんです。確かに当たってはいるんですが、全く手ごたえが無いというか、まるで攻撃が当たってないかのような感覚に襲われたんです。」
「どういうことカボか?確かに攻撃は当たっていたカボよ。」
「それで思ったんです。カプサイ神・激辛は闇のころものようなものまとっていたのではないかと。」
「闇の衣?ゾー○のやつカボか?」
「Ⅲネタは分かる世代と分からない世代があるので、せめてⅧとかⅨで出てきた装備の方にしましょうよ。というか、ジャックさんこそ何歳ですか?」
「・・・ひみつカボ。」
「どうでもいい漫才をするな!鬱陶しい。」
とうとうアルフィーナがきれた。少しふざけすぎたとウルロイとジャックは反省する。
「で、闇のころもをまとっていたのか?」
「いえ、見たところ闇のころもらしきものは見当たりませんでしたが、奴の体の周りを赤いオーラのようなものが覆っていたことは少し気になります。もしかすると、闇のころもよりもっと強力なころもをまとっていたのかもしれません。」
「もっと強力?」
「ええ。たぶん僕の攻撃は、カプサイ神・激辛にはダメージを与えることができていないと思います。すると、やはり考えられるのは攻撃をすべて無効にする闇のころもも顔負けのすごいころもをまとっていたのかもしれません。」
「なんだか、ころも、ころも聞いていたら揚げたてのテンプラが食べたくなってきたカボ。」
「うるさいカボチャ。テンプラにするぞ。」
アルフィーナは冷たくそういう。
「だがしかし、もし本当にお前の言うとおり謎のころもを唐辛子野郎(カプサイ神・激辛)がまとっていて、攻撃が無効になるんじゃ、こっちに勝ち目はないじゃないか。」
「そうなんですよね。」
う~ん、とウルロイはどうすればいいか考える。
すると、ジャックが何かを思いついたようだ。
「でも、特技ってずっとは続かないカボよね。ということは、カプサイ神・激辛もずっと無敵ってわけじゃないんじゃないカボか?」
「いえ、闇のころもはある条件がそろうまで永続でしたので、カプサイ神・激辛のころもそうじゃないかと・・・。」
「え、永続!?じゃあ、どうすればいいカボか?」
「だから、今それを考えているんだよ!どてカボチャ!」
「ひどいカボ。あんまりカボよ・・・。」
「そうですよアルフィーナさん。他人にあまり強く当たらない方がいいですよ。昔からそうでしたけども。ユハさんとは大違・・・」
「ユハの話をするな。吐き気がする。」
このときのアルフィーナの表情は今まで見たこともないほど怒りに満ちていた。鋭くウルロイをにらみながら強く言った。
しまった、といった表情を見せたウルロイはすぐに
「すいません。」
と謝った。
「・・・ちっ、お前のせいで嫌なことを思い出したじゃないか。」
アルフィーナは、はあ、とため息をつくと、こういった。
「一刻も早く家に帰りたい。でも、お菓子は諦めない」
「じゃあ、カプサイ神・激辛を倒すしか・・・。」
「分かってるんだよ!どてカボチャ!!」


「一度倒れながらも、再び我の前に立ったその勇気だけは称賛するとしよう。しかし何度来ても同じことだ。我の圧倒的辛さのま・・・」
またしてもカプサイ神・激辛が台詞を言い終わらないうちにウルロイが襲いかかる。
「こんどはさっきのようにはいきませんよ!」
ぶんっ!とウルロイは両手剣をカプサイ神・激辛めがけて振り下ろした。
攻撃は確かに当たったが、カプサイ神・激辛は微動だにしない。ダメージはないようだ。
「どうやら僕の読み通り、ころも系のなにかを使っていますね?」
「赤の辛域。我の辛さの象徴だ!」
そういって今度はカプサイ神・激辛がウルロイに右手を伸ばす。
それを察知したウルロイはすぐさま後ろへ飛んだ。
「やっぱり、右手だけ別のころもをまとってますね。さっきはそれにやられて麻痺したわけですか・・・。」
「ほう、黄の辛域に気がついたか。面白い!戦いとはこうでなくてはっ!」
ウルロイは黄の辛域に気をつけながらカプサイ神・激辛の攻撃を巧みにかわしていく。さすがに戦いには慣れているようだ。
しかし、ウルロイはカプサイ神・激辛の攻撃をかわすだけで攻撃を一向にしかけようとはしない。逃げ回っているだけだ。
「どうした、そちらからは攻撃を仕掛けてこないのか?」
「どうせ攻撃しても無効化されるんですから、逃げるしかないでしょう。」
「我を退屈させるな。これでどうだ!レッドホットミスト!」
「しまっ・・・!」
ずっと近距離攻撃しかしてこなかったために範囲攻撃をかわせるほど間合いを取っていなかった。
そのため、ウルロイはもろに攻撃を受けてしまった。
あたりを赤い霧が包む。
「ごほっ!ごほっ!」
ウルロイがせき込む。
「ふははははっ!これが我の辛さだ!激辛であ・・・」
「ふんっ!」
カプサイ神・激辛の台詞をさえぎって赤い霧の合間からウルロイの両手剣がカプサイ神・激辛に攻撃を仕掛ける。しかし、やはり攻撃は無効化されてしまった。
だが、この攻撃はフェイクだ。ウルロイには考えがあった。
攻撃が外れ、剣が跳ね返されたその刹那、ウルロイはカプサイ神・激辛の懐に潜り込んだ。
「ぬ!いつの間に!」
一瞬あせりを見せたカプサイ神・激辛は、黄の辛域をまとった右手でウルロイに攻撃しようとした。
すると、ウルロイがニヤッとして、カプサイ神・激辛の腹を思いっきり殴った。
「ぐわぁ!!な、なんだと!」
カプサイ神・激辛がよろける。しかし、ウルロイの攻撃は続く。両手剣を使って連続攻撃をする。先ほどまでと違い、確かにダメージを与えているようだ。
そして、最後に会心の一撃を決めた!
すでに立ち上がる力も残っていないカプサイ神・激辛は、残りの力を振り絞ってこういう。
「なぜだ・・・・・・。なぜ我がふたたび敗北の辛酸をなめねばならぬ・・・・・・。」
「当り前カボ。絶対にお前なんかにスウィ~ツランドは渡さないカボ。ここから消え去るカボ!!」
「おおお・・・・・・。消えるというのか。我の魂が・・・・・・・・・!ふふふ・・・なるほど・・・。これもまたなかなか・・・の辛・・・・・・」
そう言い終わらないうちにカプサイ神・激辛は消え去った。
「勝ったぁ!やりましたよジャックさん!」
「すごいカボ!さすがはウルロイカボ!でも、どうして最後は攻撃が当たったカボか?」
「それはですね、奴が二つのころもを使い分けていることに気がついたときに、二つ同時にはできないんじゃないのかな?と思いまして、案の定、赤が攻撃無効、黄色が麻痺でした。なので、黄の辛域を使っているときは赤がまとえない。つまり唯一攻撃できるタイミングなんですよ。でも、ふつうは赤をまとっていて、近づかないと黄色をまとわないし、近づくと麻痺させされるので赤い霧を利用したんです。」
ウルロイは続ける。
「本当は何ともない攻撃だったのですが、わざとくらったふりをして、相手のすぐ近くまで行き、あせったカプサイ神・激辛が黄の辛域をまとった瞬間に攻撃したんです。そして、あとはひるんでいる間に連続で攻撃・・・こうやって倒すことができたわけです。」
「なるほど・・・。でも、本当にウルロイには助けてもらってばかりカボね。ありがとうカボ!。」
「いえいえ。」
すると、ジャックは白い花を取りだした。
「それは・・・あの茄子のこのですね。」
「マー坊・・・・・・。」
その瞬間、白い茄子の花は光を放ち、次の瞬間、なんとマー坊へと姿を変えた。
「・・・・・・マー坊?ほんとにマー坊なのカボ?」
そのジャックの質問にマー坊は元気に答える。
「ぴきゅるる~~~っ!ぼくマー坊!おまえジャク!!」
「カプサイ神・激辛は消えたのに・・・お前ほんとに大丈夫なのカボ?」
「あいつの声もう聞こえない!辛いのキライ!甘いのダイスキ!!」
「マー坊っ!」
「ジャク!!」
ジャックはマー坊を抱きしめると、ウルロイの方を向いた。
「これも全部、ウルロイがカプサイ神・激辛を倒してくれたおかげカボ!ありがとう!!」


こうして、ウルロイの活躍により、カプサイ神・激辛は倒され、スウィ~ツランドに再び平和がもたらされた。
しかし、2度あることは3度ある。来年もまた、今度は激辛より、さらに辛くなって帰ってくるのではないかと心配するスウィ~ツランドの住民もいた。


「いや~ほんとにウルロイには感謝してもしきれないカボ。これはほんのお礼カボ。」
そういってジャックはウルロイに小さなメダル10枚を渡した。
これで、めでたしめでたし。と、終わるわけにはいかなかった。現在、一人ものすごくイライラしている人がいる。アルフィーナさんだ。早くお菓子をくれと言わんばかりにジャックのほうをにらみつけている。
ジャックはそれに気付きながらも、あたかも気が付いていないかのように振舞っていた。
ウルロイは小声でジャックに言う。
「もうアルフィーナさんが我慢の限界です。早くお菓子をもらえませんか?」
「・・・・・・それが、」
「どうしたんですか?」
「・・・非常に言いにくいカボけど、実は赤い霧のせいで、お菓子職人がみんな体調を崩して寝込んでしまっているカボよ。だから、お菓子は作れないカボ・・・。」
「それはやばいですよ。カプサイ神・激辛のせいでお菓子が作れない、だから、お菓子がほしいならカプサイ神・激辛を倒してこって言って倒させてたんですよ。アルフィーナさんは何もしてないにせよ、カプサイ神・激辛がいなくなった今、お菓子が作れないってアルフィーナさんに知られたら・・・・・・。」
「聞こえてるぞ。ウルロイ。」
「ひっ!・・・き、聞こえてましたか。でしたら、あきらめてくれますよね?」
すると、アルフィーナはにっこり笑ってこう言った。
「甘党は、決してお菓子を諦めない。」
「でも、お菓子はないんですよ?」
「ないなら作るまでよ。幸い、材料なら揃ってるし・・・。」
「ざ、材料?」
アルフィーナはあの血まみれの斧を取り出し、こういった。
「今日のおやつは、パンプキンパイよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ウルロイはすべてを悟った。
ジャックさん!逃げてください!!!

甘党もあきらめない(ハロウィンイベント特別編) 完